無痛分娩について

はじめに

当院では2006年(H.18)より硬膜外麻酔による「無痛分娩」を実施しております。
現在のクリニックへ2010年(H.22)に移転し、その年の無痛分娩の実績は36件、翌2011年(H.23)には45件、2012年(H.24)は48件、2013年(H.25)は47件でした。
おかげさまで分娩数が年々増加し、医師一人体制では無痛分娩までの対応ができなくなったため、2014年(H.26)からは年間数名程度の対応に留めておりましたが、現在医師二人体制の診療が整ったこと、また、患者さまからの無痛分娩に対する要望や問い合わせが多いことから、2024年(R.6)1月より無痛分娩の対応を再びさせていただくことにいたしました。

当院の無痛分娩

  • 無痛分娩は麻酔薬を使って陣痛などの出産の痛みを軽減する出産方法です。
    当院では背中から硬膜外腔という場所に針を刺し、チューブを挿入し、そこから麻酔薬を注入し、痛みを和らげます。
  • 分娩にあたり当初、無痛分娩は予定していなかったが陣痛の痛みが予想以上に強く、分娩の途中でどうしても痛みが耐えられなくなった妊婦さま、また、計画無痛分娩をご希望の妊婦さまの両方に対応しています。
  • 無痛分娩のご希望には24時間体制で随時お応えしていますが、夜間・休日は対応スタッフの数に限りがあり、分娩や緊急手術などのために麻酔処置ができないこともあります。
    ただし、現在の実績では100%患者さまのご希望にお応えできています。
  • 無痛分娩のメリット・デメリットについては次のとおりです。
    〈メリット〉
    1. [1]最大のメリットは当然のことながら痛みを和らげることができることです。
    2. [2]麻酔をかけると子宮口の開く速度が速くなります。
    3. [3]産後の回復が早くなる傾向にあります。
    〈デメリット〉
    1. [1]麻酔をかけるとお母さんの血圧が低くなることがあり、気分が悪くなることがあります。
    2. [2]低血圧になると胎児への胎盤からの血流が減少し、赤ちゃんがしんどい状態になることがあります。ほとんどの場合が一時的ですが、継続的に続く場合は帝王切開に移行させてもらいます。
    3. [3]麻酔がかかると陣痛が遠のいてしまうことがあり、その場合は陣痛促進剤を使用します。また子宮口が全部開いてから赤ちゃんが生まれるまでの時間が長くなり、吸引分娩(赤ちゃんの頭に吸引カップを装着して引っ張る手技)になることが多いです。
      子宮口が全部開いてからなかなか赤ちゃんの頭が下がってこない場合は吸引分娩をなるべく避けるため、麻酔薬の注入を中止し、敢えて陣痛の痛みを感じてもらい、しっかりいきんでもらうことがあります。
    4. [4]片側しか麻酔が効いていないなど効果が不十分な場合があります。
    5. [5]頭痛。針の先端が硬膜を突き刺してしまった場合は起立時に激しい頭痛が生じることがあります。
      頭痛が治るのに1週間程度かかります。
    6. [6]前述のように硬膜を突き破り針の先端がくも膜腔に入った状態で麻酔薬を注入すると、全脊椎麻酔となり麻酔が効きすぎて上半身にまでにおよび呼吸困難になることがあります(一般的な硬膜外麻酔ではお臍の下くらいまで麻酔が効いているのが正常な状態です)。

無痛分娩の診療実績

2006年(H.18) 無痛分娩7人
2007年(H.19) 無痛分娩16人
2008年(H.20) 無痛分娩14人
2009年(H.21) 無痛分娩15人
2010年(H.22) 無痛分娩36人
2011年(H.23) 全分娩数 297人 (内/帝王切開30人・無痛分娩45人)
2012年(H.24) 全分娩数 409人 (内/帝王切開43人・無痛分娩48人)
2013年(H.25) 全分娩数 420人 (内/帝王切開67人・無痛分娩47人)
2014年(H.26) 全分娩数 403人 (内/帝王切開49人・無痛分娩5人)
2015年(H.27) 全分娩数 410人 (内/帝王切開67人・無痛分娩3人)
2016年(H.28) 全分娩数 400人 (内/帝王切開63人・無痛分娩4人)
2017年(H.29) 全分娩数 432人 (内/帝王切開74人・無痛分娩4人)
2018年(H.30) 全分娩数 458人 (内/帝王切開69人・無痛分娩1人)
2019年(R.1)全分娩数 398人 (内/帝王切開62人・無痛分娩1人)
2020年(R.2)全分娩数 460人 (内/帝王切開71人・無痛分娩3人)
2021年(R.3)全分娩数 511人 (内/帝王切開69人・無痛分娩11人)
2022年(R.4)全分娩数 512人 (内/帝王切開88人・無痛分娩7人)
2023年(R.5)全分娩数 544人 (内/帝王切開43人・無痛分娩12人)

無痛分娩担当医師

  • 川崎雅也
    産婦人科専門医 J-CIMELSベーシックコース
  • 松岡直樹
    産婦人科専門医 J-CIMELSベーシックコース・インストラクターコース

費用

  • 初産の方の加算 … 
    ¥90,000
  • 経産の方の加算 … 
    ¥70,000

高次施設へのご紹介について

当院は一次医療施設であるため、妊娠経過観察中に問題が発生し、高度な医療や内科などの協力体制が必要になった場合は、高次医療施設をご紹介することがあります。皆さまが無事に出産されるまでは関わらせていただきたいと願いますが、母児の安全を最優先にしなければいけないと判断した、やむを得ぬ選択であることをご理解ください。
この際には、紹介先の医療機関での無痛分娩のシステムが当院と異なっていたり、無痛分娩ができなかったりすることも生じますが、優先として母児の安全が第一であり、それが確保された上での「無痛分娩」であると捉えていただければと思います。あらかじめご了承願います。

(紹介先高次医療機関)
無痛分娩の診療体制に関する情報公開